書評:孤立不安社会 つながりの格差、承認の欲求、ぼっちの恐怖 石田美規著

 

 

ぼっち

比企谷八幡という少年は、単なるラノベの主人公にとどまらなかった。

 

彼は、現代の「ぼっち」を象徴しているもの。

人に関心を持たず、労働を嫌い、専業主夫を希求し、けれども資本主義社会に、いずれは没入しなければならないと思っている。

ぼっち

それは、現代が生み出した、社会への憂いを人を介して表象するもの。

 

著者情報と概要

石田光規

1973年生まれ。

2007年 東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学(社会学博士)

現在 早稲田大学文学学術院教授

主著 『孤立の社会学ー無縁社会の処方箋』(勁草書房, 2011年), 『つながりづくりの隘路ー地域社会は再生するのか』(勁草書房, 2015年), 『公害社会の分析と再編ーつくられたまち・多摩ニュータウンのその後』(編著, 晃洋書房, 2018年)

概要

孤立化が進み、現実空間における共同体的なつながりが失われていく現代社会。この状況は何が引き起こしたものか?我々が向かう先は、完全なる孤独の社会なのか?それとも前近代的なつながりが再生していくのか?この本は、人々が気づかずに足を踏み入れている現代を繙くための一冊!

感想

資本主義的な考えがこの世のあらゆるものを支配してしまっている。

この本を読んでいて、感じたことだ。

競争主義が、人間関係にまで浸透している。

だから最近の人々は、人間関係に疲れてしまっているのだろうか?

その場、その場で適切なキャラクターを演じ、属する集団によって、そのキャラクターを変えなければならない。

さらに、集団に属するためには、ある程度の能力やスペックが求められる

そういえば、比企谷八幡も、他者との比較基準として自分のスペックをあげていた。

  1. 勉強ができないわけではない(国語は学年三位)
  2. 目は死んだ魚のようであるが、顔立ちは整っている。
  3. かわいい妹がいる
  4. かわいい妹がいる
  5. あと、かわいい妹がいる

現代の人々も、程度の差はあれ、自分の能力に応じて、自分が属するべき集団を選んでいるのかもしれない。

人間関係の形成が、地縁のようなしがらみから解放され、自由になるはずの人間関係の構築が、最初からある程度制限されているとは、なんとも皮肉なことか・・・。

 

 

引用❶

そのさい情緒的サポートの機能を一手に引き受けたのが性別役割分業を基調とした核家族である。〔中略〕それを遂行することで社会からの承認を与えるシステムである。しかし、性別役割分業をもとに承認を付与するシステムは、男性に企業社会への従属、女性の無償労働への従属という問題を突きつけた。(石田光規、2018、34)

今でこそ、

「男は外で稼ぎ、女は家にいる」

というクソみてぇな偏見まみれの意見は、忌み嫌われるが

それが人々の承認欲求を、現在と比較して安定して満たしていたともいえる。

ある程度、役割を固定化することによって、人々は自分の存在意義を支えることのできる「承認」を受けることができる。

しかし、そのシステムをいつまでも採用するわけにはいかない。

人間の権利は、女か男にかかわらず、最大限に尊重されなければならない、というのは現代の風潮。

ここで必要になるのは、人間を最大限に尊重しつつ、承認欲求を満たすことができる集団やコミュニティを構築することなのだが、私には思いつかないんだな、これが・・・!

 

 

引用❷

人びとは承認を付与してくれる関係性を獲得するために大挙して婚活へと参入した。〔中略〕しかし、そこで整えられたのは、結婚を望む相手の条件を満たした人のみが承認を手にする市場を模した競争的システムであった。(石田光規、2018、53)

婚活は、端的に言えば、条件に見合わない人をどんどん排除していくシステム。

得をするのは、条件に適う人のみで、そうでない人は決して得をすることはない。

彼らは、ただ企業側の鴨になるだけ。

まだいける・・・!まだ大丈夫・・・!と言えなくなるまで、彼らは残った希望を胸に、婚活という「包摂排除システム」にどんどん金を落としていく。

そうして「無理だな」と思った時には、彼らは「自分たちは人に受け入れてもらえない、信じてもらえない」という自己嫌悪に陥ってしまう。

婚活は、ほとんど最初から勝者が決まっている。

結婚ですら、競争の一種になりはてている。

引用❸

「選択的関係」が主流化する社会において、友人を中心とした強い紐帯は、本音を語り合える間柄とは限らない。〔中略〕現代の人びとは、「キャラ」を演じ分けることに注力している。こうしたなか、弱い紐帯の問題解消効果は、ますます重要になるであろう。孤立脱却の糸口として、日常生活の動線に支援の場を設置することが求められるのである。(石田光規、2018、224)

真の友とは何か?

それは、自分が助けを求めることのできる者だ。

 

という意味の英文を学んだことを思い出した。

 

結びつきの強い関係にある人達との方が、一見悩みごとを打ち明けすいという思われがちだが、実はそうではない。

そういった結びつきが強固な集団では、人々は演じることを強制されることがある。その方が、集団の運営が円滑になされるからだ。

 

「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」という作品にも、このようなことを描いている話があった。

由比ヶ浜由衣は、普段属している集団では話しにくいことでも、奉仕部という「弱い紐帯」の中では話すことができる。

いや正確には、キャラクターを演じなければならない集団の中で話題にしにくい話は、その他の集団では話やすいと言った方が適切だろう。

故に、由比ヶ浜由衣は、比企谷八幡や雪ノ下雪乃に、素直な気持ちを吐露できるのかもしれない・・・。

 

まとめ

こんな方におすすめ

  • 現代社会はなぜ孤独に溢れているか?
  • 競争主義がもたらしたものはなにか?
  • 今後、人間が孤立しないために何が必要か?

以上のような、疑問を持って読んでみると、内容を吸収しやすいと思う!

では!

 

ブログ

2020/5/20

大学生・コロナ:オンライン授業いつまで?どう勉強?テストは?過ごし方は?

    コロナウイルスの影響で 小中高、そして大学生にも大きな、大きな影響が出まくっている。   オンライン授業も、その影響の結果の一つ。   大学側は大慌て。学生も学生で、暇を極めている。本当にすることがない・・・   そんな「オンライン授業」について、   後はオンライン授業に対して不安な人のために   「大学生側」がどのように対応すればよいのか、まとめていこうと思います・・・!   目次 オンライン授業の期間色々な科目群 ...

ReadMore

ヒロアカ:緑谷出久は「個性」を持って「個性的」になったのか?

思索 雑学

2020/4/7

ヒロアカ第五期:「新たな何かが、目覚める」隠された単語は?意味は?

    「僕のヒーローアカデミア」 第四期が終わり、さらには第五期の放送も決定しました。   そのキービジュアルも公開されました! 今回は、そのキービジュアルから、いろいろ考察してみたいと思います!   注意、この記事は「僕のヒーローアカデミア 第5期」のネタバレを含んでいる恐れが大きいです・・・! 閲覧にはご注意ください。   プルスウルトラ!!   目次  キービジュアル考察新しい何か。出久の後ろ関連記事  キービジュアル   &n ...

ReadMore

2020/2/25

書評:動物保護入門 ドイツとギリシャに学ぶ共生の未来 浅川千尋 有馬めぐむ著

  今回は、 始めて動物保護・愛護に関する本を手に取ってみた。 きっかけは、哲学の授業で環境倫理について学んだ時、ピーター=シンガーの「動物解放論」について知ったこと。 この本は、ピーター= ...

ReadMore

2020/2/25

書評:孤立不安社会 つながりの格差、承認の欲求、ぼっちの恐怖 石田美規著

    ぼっち 比企谷八幡という少年は、単なるラノベの主人公にとどまらなかった。   彼は、現代の「ぼっち」を象徴しているもの。 人に関心を持たず、労働を嫌い、専業主夫を ...

ReadMore

ヒロアカ:緑谷出久は「個性」を持って「個性的」になったのか?

思索

2020/2/28

緑谷出久が自殺しなかったのは爆轟勝己のおかげ|考察・推測

  多分こんなこと書いているの私くらいでしょうね。(暇かよ)   僕のヒーローアカデミアの一巻を見てみると、結構かっちゃんの性格や言動がキツイ・・・。 演出と考えれば納得は出来るけ ...

ReadMore

 

-
-

Copyright© アナクシマンドロス , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.