書評:不道徳教育講座 三島由紀夫著

 

 

七〇〇〇と数百日生きていると色々分かってくる。

この世には、漫画の様などんでん返しなぞそうそう起こるわけでもない。

人様というものは、自分が最も愛らしく、

他人を助けたいという行動が、まるまる利他的な精神からやってくるというわけでもない。

それでもこの世は、どうにかこうにか成り立っている。

麦茶に牛乳と砂糖を加えると、カフェオウレに似た味がするというが、

現実はその紛い物よりも、一層歪に違いないのである。

 

では参ろうか。

著者情報と概要

三島由紀夫

一九二五年東京生まれ。東京帝国大学法学部卒。五六年『金閣寺』で読売文学賞受賞。著書に『仮面の告白』『潮騒』『豊饒の海』などがある。

七〇年、自衛隊市谷駐屯地にて自決。

概要

「信じられません。彼はとても大人しくて、普段から真面目な人だったので・・・」。自殺や殺人のニュースを聞くたびに、お決まり文句のごとくこの一言半句を耳にする。善く生きる、人にやさしくする、人を裏切らない、この文言がいかに脆弱で、人を歪なものにするのか、この本を読んでみると解るだろう

感想

パラドックス大盛。

一言で言えばこうだろう。

牛丼の大は、600円もしないから、牛丼はコスパが高いと感じざるをえない。

しかしこの本も、人間の真理を垣間見る一助となる割には、安い。

文豪の著したものといえど、硬貨二枚ほどで済んでしまうとは。

さて。

おそらく人間の真理は、一つではない。砕け散った硝子のごとく、まとまりがない。さらにその真理とやらを見たとて、そこに大きな感情の起伏を読み取ることも、生じさせることもムズカシイ。

「真理」という名にふさわしく、驚異や恐怖なども無く、受け入れることが可能な代物だと私は、この本を読んでいて惟った。

引用❶

すべてウソは独創性である。他人から抜きん出て、独自の自分をつくり出す技術である。(三島由紀夫、1967、21)

これは一理あると言える。

第一嘘をつくためには、想像力とそれを表現するための言語能力が必要になってくる。

人間の使用する言葉の特徴には、「嘘」という現実とは異なった状況を述べる、というものがある。

折角嘘をつくことができるのだから、

たまには嘘をついてみてもいいだろう。

正直になりすぎても、

大抵それが報われることはないのだから。

 

 

引用❷

大声で、大きな叫びで人を殺すのは、実際に人を殺すよりずっと気持ちのよいものだということがわかるでしょう。しかし本当のところ、法律も文明もなかったならば、にくい奴を、ただにくいからという理由で殺すのは、人間にとって一等健康的なことであったかもしれないのです。(三島由紀夫、1967、93)

実際に人を殺すことは、法律で禁じられている。

法律で禁じられているだけであって、人を殺めることが絶対的に悪い行動というわけではない。

もし本当に、人間という生物にとって「生命を絶つ」ことが咎められるべき行いであったならば、

なぜ戦争を繰り返してきたのでしょうか?

なぜ食物のために、動物たちが機械的に殺されているのを、人間は容認しているのでしょう?

 

おそらく、いや往々にして、人間は生命の根絶が嫌いではないのでしょう。

この社会では殺人は容認されてはいませんが、

想像上で人を殺す、生命を奪う真似事は禁じられてはいません。

  • 「死ね」
  • 「殺すぞ」
  • 「その素っ首かいてやる」

という表現が日常でも使われるのは、

引用にもある通り、

声で人を殺すことが、実際の殺人では味わえない、言葉で表せない感を間接的に味わえるからかもしれません。

僕のヒーローアカデミアの文化祭編で

かっちゃんが、「音で殺す!!!」といったのも、実に理解できる言葉だと感じます・・・。

引用❸

この世の中では、他人から見て、可笑しくないほど深刻なことは、あんまりないと考えてよろしい。人の自殺だって、大笑いのネタになる。荷風先生の三千万円かかえての野垂れ死だって、十分、他人にはユーモラスである。(三島由紀夫、1967、217)

実に不思議なことだ。

この世では、「死」すら滑稽なことと受け止められてしまう。

でも、日常から私たちは人間がわずかにでも苦しんでいるのを見て笑っているではないか。

 

例えば。

例えばもし。A級戦犯の東条英機が、カプサイシンが解けないほど含有された水を飲み、その激烈な辛さに苦しみ喘ごうものなら、それを観た人々の中に、まったく笑わないものがいると思うだろうか?

とある国の首脳が、穴の開いたスーツをエヘンと着こなしていたら、それ以上に滑稽なことなどないかもしれない。

チャールズ・チャップリンの名言にこのようなものがある。

「人生は近くで見れば悲劇だが、遠くからみればコメディだ」

 

どんなに悲しくみえても、大抵自分事でないかぎり、笑えてしまうのだろう。

 

まとめ

さて、どうでしたでしょうか?

この「不道徳教育講座」は、少々残酷かもしれないが、人間の本質の片鱗を物語っている本である。

生半可な幻想を打ち破るにはもってこいの一冊になるだろう。

 

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