留学生と会話している。
言語学の講義の本を読んでいる。
電車の中で広告を見ている。
一見関係の無いように見えるこの行動。
しかし不思議なもので、関係の無いように見えることでも、連なると何かに気づくことがある。
本当に不思議なもので、人間考えていることに関連したものを目にしやすくなる。不図目を向けた所に、なぜかそういったものがある。
それはきっと偶然だろう。
言語学の本を借りたのも。
留学生との会話の間で、「語用論」という言葉が出てきたことも。まぁ語用論というか「pragmatique」なのだけど・・・。
そして電車の広告の中で
会話形式のものを見かけたことも。
ハッハっ破っ・・・!
偶然にしてはよく出来ている。
そこで私はこう感じた。
どうして日本語で、いやそもそも言葉で会話が成り立っているのかという疑問。
いや当たり前でしょ・・・!という方もいるだろう。
しかし当たり前は疑ってこそ、意味がある。自明のものに疑問や謎、ひらめきを抱き探求することって何だかカッコよくないか?
成り立つ会話
なんとなく概要を書き出してみる。
確か・・・
まず最初におっさんが、相手の女性の眼鏡をほめるようなセリフを言う。
次に、女性が相手の眼鏡の感想に対して答え、眼鏡に関連した話題を提供している。
そしておっさんが、池袋にある珍しい施設を軽く紹介し、女性がそれに答えていくという感じだ。
全文はこんな感じ。
そのメガネ、よく似合ってるねえ。ありがとうございます。いやー掘り出し物でした!でもこんなに安くていいんですか?
いいの、いいの。うちはテーマパークみたいなものだから。老眼めがね博物館に限らず、池袋はそういう場所が多いですよね。そうだねぇ。そういえばペンギンが出迎えてくれるバーもあるって聞いたなぁ。知ってます。名前もそのまま、ペンギンのいるBARですね!あと閑静な住宅街の中に、突然おしゃれな釣具屋が出てきたりするね。10minitesだったかな。住宅街の中に?面白いですね。
本屋なのに泊まれる BOOK AND BED TOKYOってのもあるよ。お目当ての何かに加えて、思いがけず楽しいことがあって、この街は、人をトクした気分にさせるのが上手ですよね。
広告にはこのような文章が書いてありました。
一つずつ文章を見ていきましょう。
まず「そのメガネ、よく似合ってるねえ」
これは単に相手のことを褒めているわけではなくて、相手に話題の提供をしている、もしくは会話の啖呵を切る役割を持っています。
そして相手側もこのことを分かっているかのように、
「ありがとうございます。いやー掘り出し物でした!
でもこんなに安くていいんですか?」
と、相手の賛辞に対して答えるだけでなく、会話が続くようにすぐさま次に疑問を投げかけています。
おっさんの最初の言葉をそのまま文字通りに受け取ってしまっていたら、このように話題を転換するような言葉を言うはずがありません。
そしていいの、いいの。うちはテーマパークみたいなものだから。とおっさんは相手の質問に答える。
女性はさらに、老眼めがね博物館に限らず、池袋はそういう場所が多いですよね。と言いながら、「池袋の様々な店」に関連した内容に会話を方向づけしています。
このように、日常生活では文法に縛られないようなコミュニケーションが繰り広げられているものです。日本語はそれが顕著な気がします。
たとえ小さな質問でも、それに対する答えから会話を発展させることができます。
発話の表面的な文字通りの意味だけをそのまま理解すればよいわけではなく、秘められた意味を引き出せればコミュニケーションは円滑に進むからである。
加藤重広、2019年、「言語学講義ーその起源と未来」、筑摩書房
引用にもある通り、会話は単なる受け答えの連続ではなく、そこから発展させていく必要があります。そうしなければ、上の様な会話はそもそも成り立たなくなってします。
あなたも普段の会話を思い浮かべてみましょう。あなたは質問に対して、文法的な処理をしていくように単調な受け答えをしているだけですか?
おそらくそうではないでしょう。
ちなみに、こうしたことを「言語の交感機能」と言ったりします。
人間は会話をする上で、相手が何を言おうとしているのか、自分がどのように答えれば会話が円滑に進むのかを推測しているのですね。
あまりにも当たり前すぎて、逆に意識することが難しいかもしれませんが、意識してみると結構面白いものです。どうしてほぼ無意識のレベルでこんなことができてしまうのか不思議に感じるでしょう。
語用論
こうした文章の解釈・意味に着目することを「語用論」っていったりします。
文の音や文法や構造に着目するような学問ももちろんありますが、私的にはこの「語用論」が結構面白いです。
一番身近で、不可欠な「言葉」だからこそ、違う視点で見たときの驚きが非常に大きいです。それがめちゃくちゃ楽しい・・・!
電車の中にある、一広告でさえもこのように考えを広めることが出来るなんてすんごい事だと思います。
考えることって、めちゃくちゃ面白いです。
なんだか頭がよくなった気になるし、あと時間もつぶすことが出来ますしね・・・。
まとめ
ということで
日常に溢れに溢れまくった「言葉」「会話」を、語用論、交感機能といった視点から見てみました。
あらためて言葉って奥が深いなぁと感じますし、こうした知識は外国を勉強するうえでも非常に役立つなと感じました!